リターフォール・リター分解|Litterfall and Litter decomposition
【動画】リタートラップ
(北海道大学雨龍研究林|吉田俊也氏)
リターフォールと林内雨の多点観測
(ドイツ・ゾーリンゲン山地の研究サイト)
【動画】リターバッグ
(北海道大学雨龍研究林)
リターバッグ(左)と林内での設置のようす(右)
(北海道大学中川研究林)
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葉や枝などの枯死物を総称して、リターと呼び、林冠からリターが脱落して地表に降下するものを、リターフォールと呼びます。地下部にある根もやがて枯死するので、それらは根リターとして土壌に供給されます。
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リターには有機物や養分が多く含まれており、土壌動物や微生物によって再び分解されることで森林生態系内を再循環しています。リターフォールは土壌腐植に含まれる有機物の供給源としても重要であり、有機物の存在によって土壌腐植もつ多様な構造や機能が維持されています。
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リターフォールやリター分解の特性は植物の種類だけではなく、気候、地質、土壌を含むさまざまな環境要因の影響を受けています。
【リターフォール】
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一定面積の開口部をもつ円錐状のネット(寒冷紗など)で採集することが多いです(リタートラップ法)。ロートのような形にネットを加工し、杭などで開口部が水平になるように設置します。長方形のプラスチック容器を用いて採集する場合もあります。採集する対象がリターではなく堅果や種子(シード)の場合には、同じ採集装置をシードトラップと呼ぶこともあります。
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円錐状のリタートラップを用いる場合には、風などでトラップに入ったリターが外に出ないように、底部を紐で地表に固定したり、トラップ内に錘を入れたりするなどの工夫が必要です。また、野鳥によるリターや種の持ち去り等の影響を避けるためには、開口部にナイロン紐を十字に張るなどの防御策を取ります。
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積雪地域においては冬期間も常緑樹からの葉リターや、積雪の物理的作用で生じる枝リターなどが生じることも知られています。そのような量を測定するためには積雪前に箱型のリタートラップを地表に置き、底面はネットなどで融雪水が排水されるような工夫が必要です。
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採集したリターは樹種や部位別(葉、枝、堅果など)に分け、乾燥してから重量を測定することが多いです。養分濃度や化学成分の分析をする場合には、その乾燥試料について機器を用いて粉砕し、以降の分析に用います。
【リター分解】
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地表に供給されたリターの分解速度を調べるためには、あらかじめ重量や成分濃度を測定したリターをネット状のバッグ(リターバッグ)に入れて地表に固定し、一定期間後に回収して重量や成分濃度を測定し、時間あたりの変化速度を求める方法が一般的です(リターバッグ法)。
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分解途中で未分解のリターがバッグから脱落しないように細かいネット状(1 mmメッシュなど)のバッグを用いることが多いです。しかしながら、ネットの網目よりも大きい土壌動物がリターにアクセスできないという欠点も有しています。
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リターバッグ法では一定期間ごとにサンプルを持ち帰ることになるので、サンプリング回数分のリターバッグを設置当初に準備する必要があります。同時期のサンプリングにおいても繰り返し(反復)が必要となるので、反復数×回収数のバッグが必要となります。
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回収間隔や期間は研究目的によって異なり、数週間おきに1年程度で調査する場合もあれば、より広い時間間隔で2~3年程度まで調査を続ける場合もあります。
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バッグの回収時には地表の土壌が表面に付着していることが多いので、回収時にブラシなどを用いて除去する。研究目的に応じて内容物を分別し、乾燥後に重量測定、その後に成分分析用に粉砕します。
「森林集水域の物質循環調査法(柴田英昭著・共立出版)」第4章より抜粋、一部改変