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植物の養分吸収|Nutrient uptake by plant 

【動画】毎木調査の概要
(北海道大学雨龍研究林|吉田俊也氏)

【動画】樹木の直径測定の方法
(北海道大学雨龍研究林|吉田俊也氏)

【動画】細い樹木の直径測定の方法
(北海道大学雨龍研究林|吉田俊也氏)

【動画】樹高測定の方法(数メートルの場合)
(北海道大学雨龍研究林|吉田俊也氏)

【動画】樹高測定の方法(高い木の場合)
(北海道大学雨龍研究林|吉田俊也氏)

6.1_根バイオマス調査_天塩.jpg

根系バイオマスを測定している様子
(北海道大学天塩研究林)

  • 植生は一次生産に必要な養分を土壌から吸収します。その一部はリターフォールとして土壌へ還元され、土壌動物や微生物によって分解、無機化を経て養分として再利用されます。植物による養分吸収量は樹種や土壌肥沃度などによって異なり、その量を測定することは土壌溶液の成分濃度やフラックスに大きく影響するばかりではなく、森林集水域の養分保持や炭素固定といった生態系機能の評価にも重要です。

【養分吸収量の計算方法】

 次式により、一般的には一年間の単位で調べることが多いです。

NU = LF + LC  + ⊿W        

NU: 植物の養分吸収量
LF:リター脱落量(落葉、落枝、枯死根)
LC:雨水による植物体からの養分溶脱
⊿W:枝、幹、根の木部に蓄積される養分量

  • ⊿Wはリターフォールとして脱落せずに幹、枝、根の木部に蓄積される養分量であり、森林生態系の場合は幹が占める割合が比較的大きいです。

  • リター脱落量(LF)は地上部からの落葉、落枝(リターフォール)のほか、地下部における枯死根が含まれる。落葉樹の場合に、葉に含まれる年間の養分量はリターフォールとして求めることができます。常緑樹では、林冠部での閉鎖し、葉の量が一定である場合(成長と枯死がほぼ同量)には落葉樹と同様に取り扱うことができます。しかしながら、葉の量が年間ベースで正味増加しているような場合には、葉の平均寿命や滞留時間を用いて、生葉内に増加する養分を⊿Wに含めて取り扱う必要があります。リター脱落量(LF)のうち、植生によっては地下部リターの枯死が無視できないほど大きいこともあります。

  • 雨水による溶脱量(LC)は、林外における大気沈着量(湿性沈着と乾性沈着の合計)と林内における雨水による物質量(林内雨と樹幹流)との差から求めることができます。カリウムなどの成分は溶脱の割合が比較的多いため、養分吸収量に占める溶脱量(LC)の割合が比較的高いです。

【植生の成長量と枯死量】

  1. 毎木調査・アロメトリー式による方法
    樹木はバイオマス(生物量)が大きいため、広い区画での全重量を直接計測をすることが困難なことが多いです。そのため、一定の土地面積(1~数haなど)に生育する全ての樹木の個体数、種類、サイズ(直径、樹高、枝張など)を調査(毎木調査)し、その密度やサイズ構造を以下に述べるような方法で解析することが一般的です。
     毎木調査を定期的(1~5年間隔など)に実施することにより、個体ごとの直径や樹高の増加量を求めることができます。
     バイオマスを求めるためには、樹木個体のサイズとバイオマスの関係式(アロメトリー式)を用いる必要があります。アロメトリー式を求めるためには、できるだけ多くの供試木を実際に伐倒し、そのサイズ(直径や高さ)と各部位(葉、枝、幹、根)の乾燥重量を測定し、経験的な関係式を得る必要があります。
     根系のバイオマスを測定するためには、大型重機等を用いて土塊ごと根系を掘り取り、圧力式ポンプなどを用いて土壌を水で洗い流し、根系重量を測定する方法もあります。

     

  2. 枯死量と細根動態
    地上部植生の枯死量についてはリタートラップを用いて、落葉や落枝の量を調べることができます。ただし、風倒や虫害などの理由で個体全体が枯死した量についてはリタートラップでは計測できないので、一定期間後に計測した毎木調査データとアロメトリー式を用いて推定する必要があります。
     細根の成長量と枯死量を調べるためには、土壌を採取して細根量(生根、枯死根)の現存量を一定期間(例えば、数ヶ月)ごとに繰り返し調べ、その季節変化から推定することができます。しかしながら、細根量の場所によるばらつきを考慮に入れなくてはなりません。
     イングロースコア法は、細根が侵入できるよう周囲をネット状(数mmメッシュ程度)にした容器(コア)を用いて、そこに侵入した細根量を調べることで、一定期間内の細根成長量を求める方法です。細根の含まれていない土壌をイングロースコアの容器に充填し、再び土壌内に埋設します。一定期間後に、イングロースコアを回収し、内部の土壌に侵入した細根のサイズや乾物重、成分濃度などを測定し、設置期間中の細根生産量を求めます。
     ミニライゾトロン法は、土壌内にアクリル製などの透明なチューブを埋設し、周囲の土壌からチューブ外周に到達した細根の変化を、チューブ内側ら撮影し、その画像を用いて細根動態を解析する方法です。ミニライゾトロンチューブ内で同じ場所で繰り返し画像を撮影し、その変化を調べることで、新たな細根の出現や伸長量を求めることができます。また、細根の消失や色の変化から、枯死・分解量を推定することができます。ただし、この方法では直接得られる情報は、細根の長さや幅といったデータです。したがって、細根の重量としての成長量や枯死量を推定するためには、土壌と細根の直接採取によって得られたデータから、長さと重量の関係(アロメトリー)を用いて計算する必要があります。

​「森林集水域の物質循環調査法(柴田英昭著・共立出版)」第6章より抜粋、一部改変

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