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河川水質|Stream water chemistry 

【動画】河川水の採取方法
(北海道大学雨龍研究林)

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Vノッチ(90°)式量水堰による水位観測の様子
(北海道大学天塩研究林)

【動画】量水堰による水位観測の様子
(北海道大学雨龍研究林)

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流速計を用いた河川流量観測
(北海道大学雨龍研究林)

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観測橋を用いた河川水位観測
(北海道大学雨龍研究林)

  • 集水域生態系では、大気や鉱物風化による物質流入と植生-土壌-微生物系内での物質循環の作用を受けて、河川の水質が形成されます。また、水質成分の挙動には水の動きが影響するので、集水域における水文過程と水質形成には密接な関係があります。

  • したがって、河川水質を調べることで集水域生態系の物質循環全体の特徴を大まかに把握することができます。また、環境変化等の影響により生じた集水域内での物質循環変化の様子について、河川水質を調査することでその変化やメカニズムを考察することができます。

【河川水の採取】

  • 水質分析をするための試料採取に際しては、事前に十分洗浄した採取容器(ポリエチレン容器など)を使用しなくてはなりません。一般には脱イオン水や蒸留水で洗浄することが多いです。溶存有機物の詳しい特性などを調べる場合には、あらかじめ強酸(塩酸など)で洗浄した容器を使用することもあります。

  • 河川流路内で流れのある場所で採取を行い、試料を採取する際には、その河川水で容器内部をよく洗浄すること(共洗い)が大切です。採取する容器に河川水を約半量入れ、フタをしてよく振り混ぜることで共洗いをします。少なくとも3回程度の共洗いを繰り返すとよいです。

  • 河川流路内で水の流れがある地点に直接アクセスできないような大きい河川の場合には、橋の上からロープにつないだ採水バケツを用いて採取することもあります。

  • より広くて深い河川の場合には、流路の表面と内部では水質成分に違いがある可能性もある。その際には、河川水中でフタを閉めることができる採水器(バンドーン採水器など)を用いて中層からの水を複数個所で採水することもあります。

  • 河川水質は流量の変化を受けて変動することが知られているため、研究目的に応じて採水時期を決めなくてはなりません。流量変動時の細かい変化を調査する際には、電動ポンプが内蔵されている自動採水器(オートサンプラー)を用いることもできます。

​【濾過】

  • 採水した河川水試料には溶存成分の他に、粒子状物質や微生物などが含まれており、そのままの状態で保管しておくと、溶存成分濃度が変化してしまう恐れがあります。そのため、研究の目的に応じて、できるだけ速やかに濾過をすることが一般的です。

  • イオン濃度、溶存有機物などを対象とする場合には、捕捉粒子の孔径が0.7μmのガラス繊維濾紙(GF/F)を使用することが多いです(使用前には有機物除去のために電気炉で数時間加熱する必要があります)。

  • イオン濃度の分析用に粒子やバクテリアをできるだけ除去するためには、孔径が0.2μm程度のメンブレンフィルターなどを用いることも多いです。

  • 河川水に含まれる粒子成分の濃度や物質濃度を測定する場合は、あらかじめ乾燥重量を測定してあるガラス繊維濾紙等を用いて一定量の河川水試料を濾過し、濾紙上に捕捉された粒子成分を濾紙ごと乾燥させて重量を測定します。

【試料の保管】

  • 輸送・保管中の水質変化を防ぐためには試料を冷蔵、冷凍保管することが一般的です。現地で採取した河川水を実験室へ持ち返る際には、クーラーボックスなどを使用して低温状態で輸送すると良いです。

  • 採水した試料に薬品(塩酸など)を速やかに添加し、採取後の微生物反応や沈殿による水質変化をできるだけ防ぐという方法もあります。

  • 溶存有機物特性を分析する場合には、光分解の影響を避けるために褐色瓶などに保管すると良いです。

  • 水の同位体(酸素・水素)を分析する場合には蒸発の影響を防ぐためにガラス瓶に保管し、容器内に空気が入っていない状態で密栓する必要があります。

​【流量の観測】

  • 集水域から河川を通じた物質流出量を求めるためには、溶存成分濃度と河川流量を調べる必要があります。

  • 水位センサーを用いて河川の水位を連続測定し、別に計測された水位と流量の関係式を用いて流量を算出することが多いです。水位や流量の観測は流路が比較的安定している場所で行うのが望ましいです。

  • 森林小集水域では、水位の変動をより精密に測定するために、Vノッチ式の量水堰を設置し、堰内の水位を圧力式あるいはフロート式水位計によって継続的に測定し、そのデータをデータ収録装置(データロガー)を用いて自動的に記録することができます。

  • 水位と流量の関係を求める方法は、河川規模によってそれぞれ異なります。森林源流域など小さい渓流で、Vノッチ式の量水堰がある場合には、一定時間内に堰から流れ出る河川水をプラスチック容器やビニル袋などで測定し、流量を算出します。ある程度の幅と深さがある流路の場合には、電磁流速計やプロペラ式流速計を用いて、流路内の平均的な流速を計測します。同時に、流路の幅と深さを計測して流路の断面積(幅×深さ)を測定し、流速と断面積を乗じて流量を求めます。その際、流路幅が広い場合には、複数地点で流速を測定しなくてはなりません。

​「森林集水域の物質循環調査法(柴田英昭著・共立出版)」第7章より抜粋、一部改変

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